• 深夜に面白いミームが送られてきた時 — (笑い死んだ、爆笑。)
  • 政治家があまりにわざとらしい謝罪をした時 — 草生えた(「草が生えた」。痛々しさと面白さが入り混じった状態。)
  • 現実離れした absurd(不条理)な出来事 — 大草原不可避(「広大な草原、不可避」。笑いの最大出力。)
  • ちょっと面白いかな、という程度 — w(草一本。微苦笑。)

インターネットには、古今東西、独自の「笑い」の言語が存在します。英語圏では「lol」、「haha」、そしてより皮肉めいた「lmao」などが使われます。しかし、日本は全く異なる道を歩みました。その結果、行き着いた先が「植物」だったのです。

すべては「笑う」という言葉から始まりました。90年代後半の2ちゃんねるのような日本の初期インターネット文化では、面白い書き込みの後に「(笑)」とつけるのが定番でした。これは英語の「(lol)」にあたります。しかし、インターネットの知性は簡潔さを好みます。ユーザーたちはやがて「笑い」のローマ字の頭文字をとって、単に「w」と略すようになりました。

そして、美しい出来事が起こりました。たった一つの「w」は微笑み程度。二つになればもっと面白い。面白ければ面白いほど「w」は積み重なり、「www」、「wwww」、「wwwwwwww」と増えていきました。コメント欄を埋め尽くす「w」の壁。その小文字の「w」が並ぶ姿を見た誰かが気づいたのです。「これ、草に見えるんじゃないか?」と。まるで画面上に草が生い茂っているかのように。

🌿 草の生え方スケール
  • w — 草一本。控えめな「面白いですね」というサイン。
  • ww / www — 普通に面白い。標準的な笑い。
  • — 「lmao」と同義。文字通り「草が生えた」。
  • 草生えた — 実際に声を出して笑った時。
  • 大草原不可避 — 「広大な草原、不可避」。面白すぎて笑うのを避けられない状態。

「www」から「草」への飛躍は自然発生的なものでした。誰かがそう表現し、コミュニティが「それは完璧だ」と認め、その言葉が定着したのです。現在、「草」は英語の「lol」と全く同じように機能しており、心からの笑いから皮肉まで、幅広く使われています。リアクションとして単独で使うこともあれば、文末に添えることも、あるいは「大草原不可避」までエスカレートさせてコメディ的効果を最大限に高めることも可能です。

実際にどう使うのか

X(Twitter)、YouTubeのコメント欄、ニコニコ動画、Discordなど、日本のSNSでは常に「草」が溢れています。返信として「草」とだけ書けば、「死ぬほど笑った」という意味になります。文末に添えれば、英語の「lmao」のように面白さを強調したり、少し砕けたニュアンスを加えることができます。一方で「w」を一つだけ使うのは一番控えめで、相手に「面白いと思ったけど、そこまで爆笑はしていないよ」というシグナルを送るような感覚です。

一つ重要な注意点として、「草」はあくまでネットスラングであり、現実の会話に完全に浸透しているわけではありません。ネットに親しんでいる若者なら口にすることもありますが、ビジネスの場や50代以上の方に対して使うと、「?」という顔をされるでしょう。「TPOをわきまえる」、この場合は「プラットフォームをわきまえる」ことが大切です。

📷 IMAGE — 2000年代初頭の2ちゃんねるの画面インターフェース

なぜ植物なのか、なぜ日本なのか

「草」という言葉がこれほど日本らしく感じられるのは、その偶然の詩情にあります。あまりに面白いと、そこから物理的に草が「生えて」くる――画面から、状況そのものから草が生えてくるという光景には、どこかシュールで俳句のような趣さえあります。「大草原不可避(目の前に広大で避けようのない草原が広がっている)」へのエスカレートは、日本のインターネット文化が得意とする、真顔で語るナンセンス(Deadpan absurdism)の極致と言えるでしょう。

また、これは日本のネット言語が英語とは異なる進化を遂げていることを示しています。英語圏のスラングは「brb」「omg」のように短縮形や音韻に向かう傾向がありますが、日本のスラングは往々にして鮮やかなイメージを作り出します。たった一文字で、視覚的なメタファー(比喩)を内包しているのです。「草」は、ジョークであると同時に一つの「絵」でもあるのです。

次に日本のコメント欄で何かを投稿して、誰かが「草」と返してきたら、あなたは庭園を作り上げるほど相手を笑わせたのだと思ってください。